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その症状について応えます

歩くと体が前に傾き腰が痛くなる、続けて歩けない

 

痛くて歩けない多くは椎間板や脊椎骨組織、体幹支持筋や軟部組織の変性が原因で体幹のバランスが前方へ偏ってきた場合に発生します。骨粗鬆症による複数の骨折や下位腰椎に変性すべりが2椎間以上ある場合もリスクとなります。
元来の脊柱骨盤形態や長期に渡る日常の生活姿勢が原因病態に影響する場合が多いと思われます。
早期に原因を見つけて治療対応することが大切です。
加齢的な変性を基盤としているので病状が進行すると回復は困難となります。

重篤例に対して手術適応はありますが胸椎から仙骨に至る広範囲多椎間の固定が必要となります。

軽い痛みはあったけど、急に下肢に激痛がきて薬も効かない

 

複数の病態が考えれますが、高齢者で最も多いのが’脊柱管狭窄+ヘルニア’です。
もともと脊柱管狭窄があって(部屋が狭くて)ギリギリのことろで神経組織が頑張っている(軽い下肢痛)ものが、この狭い部屋へヘルニアが侵入してくると神経組織はもう逃げ場がありません。神経組織は強い圧迫を受け急に激痛が生じます。
下肢の痛みは強烈で回復も悪いことが多いようです。手術が必要な場合があります。

椎間板

80歳代、脚がふらつく、こけやすい、痛みはないのに、トシだから仕方ないの?

 

脊柱管狭窄症高齢だから筋力が落ち、あしが効かなくなる、すぐこけるのは仕方ないと思われるかもしれませんが、どっこい隠された狭窄症があるかも。
脚や腰に痛みがなく歩けても、狭窄症が潜在して筋力低下が進行する場合があります。しっかり診断して神経機能障害が重篤になる前に手術をすればこれは免れることができます。最近は手術侵襲が小さくて、手術成績が良くなり手術は怖くありません。


注意 脚が衰えたなぁ、すぐこける!

痛みがなくても狭窄症が潜んでいるのかも

高齢者のぎっくり腰、放っておいて良いの?

 

高齢者のぎっくり腰は多くが骨粗鬆症を伴う椎体の骨折です。骨粗鬆症が進行し骨が弱くなると重いものを持たなくても、転倒しなくても骨折する場合があります。骨折程度が軽いと腰痛は一見ぎっくり腰に似て痛みは一時的で早期に回復するので、そのまま見過ごされます。けれど背景に骨粗鬆症があり、一度骨折を起こすと次の骨折を起こすリスクは2.6倍、2回以上骨折があると7倍以上に上がります。放置すると次回の骨折は寝たきり要因となります。骨粗鬆症の薬物治療が必要です。次の骨折を予防できるように医療機関に受診してください。
骨粗鬆症による椎体骨折の痛みの特徴は、姿勢を変える時、特に起き上がり動作、横になる動作、寝返り動作時の痛みです。痛みが強いほど要注意です。

 

注意 高齢者のぎっくり腰

骨粗鬆症による背骨の骨折が多い、受診してください

腰全体がガタガタでどうしょうもないと言われたけど!

 

高齢になると多椎間に強い変性が進み、あちこちに不安定性や狭窄を呈する例があります。手術を行うと、上から下までの広範囲の固定という判断がなされる場合があります。この広範囲の固定手術は賛成しかねます。一番理想的なのは固定せずリハビリで腰椎支持機構を強化することです。狭窄があれば手術は狭窄だけを除き、不安定性に対しては腰椎支持機構の増強を担うリハビリで対応したいものです。頭を切り替えて症状改善は60%で良し、歩ければ良しです。広範囲の固定手術はお勧めしません。

 

注意 多椎間不安定性

固定しないで、腰椎支持機構の回復に向けたリハビリ

歩くと下肢が痛くなる、椎間孔狭窄症と言われたけど手術しないで治りたい!

 

椎間孔狭窄症は下肢の強い痛み、歩くと下肢が痛いという間欠跛行を呈します。退行変性を基盤にしており、この意味において改善しにくい疾患と言えますが脊柱管狭窄症よりは保存治療に反応しやすいものです。狭窄が多少強くても安定性が得られれば痛みが取れやすいという性質があるようです。

手術になると除圧だけではなかなか良い成績が得られず、固定が必要となる場合が多いようです。保存治療で痛みが取れれば幸いと言えます。

 

注意 椎間孔狭窄症

狭窄症より保存的に治りやすい!

手術をしたのにしびれが取れない!

 

理由はいろいろ考えれます。検討されるべき要因は、神経組織の除圧が適切になされているか、不安定部に固定が加えられているか、残存する関連病巣はないか、影響する不安定性はないか、手術前の神経組織の障害はどの程度だったか、神経障害性疼痛の関与はないかなどです。
一般的に手術により神経の圧迫は解除されても、しびれは改善しにくい場合があります。
病状がさほど重篤でなく、不安定性も少ない、神経障害性体質もないなど良好な条件が揃う場合はすっきり改善されるものですが、神経障害が高度の場合、その程度に応じてしびれが残る場合はどうしてもあります。

 

注意 手術が適切になされていても、残る場合があります

金属で固定手術が必要と言われたけど、本当に必要?固定すると何が悪いの?

 

固定手術は不安定性が重篤で固定しないと良好な成績が出ないと判断される場合に行います。すなわち椎間の動きを犠牲にします。 私の臨床経験では腰椎椎間板ヘルニアでは固定が必要になるケースは非常に少なく、多少の不安定性があってもヘルニアを摘出するだけでまずは良い成績が得られます。ヘルニア再発例でも同様です。

狭窄症の場合、すべりや側弯変形などがあり、かつ不安定性が強いと判断される場合に固定が必要となります。変性すべりや変性側弯があればすなわち固定ではなく、不安定性の程度により判断されます。固定を行うと隣接椎間に非生理的な負担がかかりこの部分の変性(すべり、側弯変形、椎間板破壊)が進み、その後の経過において重篤な症状が生じ、更なる固定手術を余儀なくされる場合があります。特に高齢者は多椎間に変性が進行しており、固定した隣も負担に耐えることができません。固定は最終選択にしたいものです。

この観点からすべりがあり不安定性のある例でも、リハビリで術前後に腰椎支持機構を強化して、非固定で除圧手術を行い良好な結果が得られる多くの例を経験してきました。

特殊な例として体幹バランスが崩れた重篤な変性側弯や変性後弯の病態を伴う場合、固定手術が必要となる場合があります。胸椎から仙椎までの広範囲の固定が必要になります。

 

注意 固定手術は最終選択に!

ぎっくり腰ぎっくり腰、横に曲がって腰が伸びない!

 

ぎっくり腰の典型的なタイプです。
ぎっくり腰の原因疾患はいろいろありますが、椎間板由来が多いようです。このタイプの痛みは椎間板変性がやや進行して椎間板内圧が高くなく脱出力が強くないタイプのヘルニアが多いと思われます。これが病態ですから回復は良いようです。ブロックにも徒手療法にも良好に反応します。

中年女性、腰椎すべり症と言われたが治療しても痛みが取れない!

 

すべり症中年女性に多い疾患で腰椎変性すべり症と言います。元来腰椎の後方関節の形態にすべりやすい弱点があり、これに加齢的な変化が加わると発生します。脊柱管狭窄症の合併は必至で、一旦発症に至ると病気の性質より改善しにくい疾患と言えます。薬や牽引など治療をしても痛みが取れないという訴えはよく耳にします。比較的頻度の高い疾患です。

保存治療としては狭窄の程度やすべりに関与する腰椎の姿勢の変化や軟部組織の変化、腰椎支持力低下などの病態を見極め、これを改善する手立てを講じればかなり良好に治療できます。ただし狭窄が高い度のものは難治で手術治療が必要になります。

 

注意 保存治療

姿勢バランスの変化、腰椎支持力低下、
軟部組織の病的変化などからアプローチ、
狭窄が強くなれば改善可能!

 

ぎっくり腰を繰り返す、今度のは痛みが取れない!

 

もっとも最も多いのは原因が椎間板ヘルニアで、ヘルニアが安定せずに何回も繰り返し少しずつ脱出する場合があります。ヘルニアがまだ小さい間は痛みが回復しますが、ヘルニアが大きくなると回復しなくなります。また今まで腰痛だけだったものが新たに下肢痛が加わる場合もあります。ヘルニア脱出程度を確認してその病態にあわせて治療対策を立てます。

 

注意だんだんヘルニアが大きくなったからです

仙骨神経根嚢腫(せんこつのうしゅ)って言われたけど?

 

 神経根分岐部直下で脊髄膜が嚢胞状に膨隆し、これが隣接神経根を圧迫するために仙骨部や下肢に痛みが発症する病気です。中年女性に多く第2第3仙骨神経根に好発します。成人の5%に認められMRIで容易に診断されます。嚢腫があると全て発症するわけではなく20%以下で痛みが出るとされています。局在部位の関係上、膀胱障害を呈することもあります。

保存的には痛みの性質を利用した治療で奏功することが多いですが、難治例では嚢腫内神経組織の温存を計りながら嚢腫の縫縮手術を行います。

当院では13例に手術を行い、良い成績が得られましたが、膀胱障害を呈した重篤例では障害が遺残しました。本症がぎっくり腰の原因となったこともありました。

仙骨嚢腫

重労働は腰が痛くて復帰できない、何とか治りたい!

 

ヘルニアなど神経組織圧迫病態を伴う場合、支持機構の破綻があり負荷に対応する能力が低い場合、両者が混在する場合が想定されます。

神経圧迫病態の関与が大きい場合は手術で解除することも念頭に置きながら、まずは徹底的な腰椎支持機構のリハビリが選択されるべきでしょう。腰椎支持力の回復とともに神経症状の回復も期待できる場合があります。

 

注意 重労働復帰
まずは腰椎支持力を上げたいものです

脊髄終糸症候群って言われたけど?

 

胎生期に退縮すべき終糸が遺残し脊髄を尾側に引っ張り固定する病気です。大人になってから発症すると腰椎椎間板ヘルニアに似た腰下肢痛を呈します。一般的な腰下肢痛を呈する疾患は神経組織の圧迫が主な病態ですが、この疾患だけは神経が引っ張られて症状が起こります。画像でヘルニアや狭窄など明らかな異常所見がなく原因不明の腰下肢痛として治療が遅れる場合があります。

簡単に終糸について説明します。

終糸とは脊髄の尾側端(脊髄円錐)と尾骨を結ぶ糸状の組織です。

胎生期に脊髄原基の尾側部分が退縮して終糸が形成されます。その後胎児の成長とともに引き伸ばされ更に退縮しますが、これが何らかの原因(催奇因子)で肥厚や変性硬化した状態で遺残すると、誕生後も脊髄円錐を固定、牽引します。 たいてい小児期までに膀胱直腸障害、下肢筋力低下を主訴として足部変形、側弯症、腰仙部皮膚異常を伴って発症します。しかし成人発症例が稀にあり、原因不明の腰下肢痛として出現します。
治療は終糸を切離することですが、治療が遅れると成績は良くありません。当院では再発例を含めた6例の手術例を経験しました。

終糸

スポーツクラブに属し、ヘルニアも分離症もないと言われたのに腰痛が治らない

 

オーバーワークの蓄積による腰痛が考えられます。まず診察所見や画像所見でヘルニアや分離症を除外する必要があります。スポーツによる負荷の程度と、その人が持つ腰椎の解剖学的弱点が関与する場合があると思われます。治療は診断が確定すれば、腰痛が慢性化しないうちに行うことが大切で、疲労回復、腰椎支持性増強、痛みの性質を利用した治療方針が選択されます。