> 腰部脊柱管狭窄症とは

1.どんな病気ですか?

 

○ 腰椎の脊柱管が狭くなり、内部にある神経(馬尾、神経根)が 圧迫されて、下肢に痛みやしびれが出る状態の総称です。

○ 腰椎の構成要素である、骨、靭帯、椎間板が退行変性に陥り、 脊柱管を狭めます。

○ 圧迫された神経組織は血行障害に陥り、 浮腫や神経変性が起こります。
○ ほどんどの脊柱管狭窄症は、体質的な脊柱管狭窄症に加えて、 退行変性による変化が加わり中年以降に発症します。

 

1) 病態を図で示します。

 

主な病態は

* 黄色靭帯の肥厚
* 椎間関節の肥厚
* 椎間板の膨隆
* 椎体の変形、骨棘

 

これが馬尾神経根を圧迫します。

※神経組織(馬尾、神経根)は血流障害が起こり変性します。

 

 

2) 椎間孔で狭窄が 起こることもあります。

 

腰椎椎間孔狭窄症 といいます。

椎間孔とは神経根が通る横孔のことで、この腰椎椎間孔狭窄症も腰部脊柱管狭窄症に含まれます。

腰椎椎間孔狭窄症に関しては重要な病態ですので別シリーズで説明しています。

 

 

3) ヘルニアを合併 することもあります。

 

これも脊柱管狭窄症に含まれます。

2.原因は?

加齢的な退行変性と言われていますが、完全には判っていません。以下のような場合に起こりやすい。

 

・前方すべりや側方すべりを伴う

・変性による側弯変形がある

・椎間不安定性がある

・機械的負荷のかかる環境に置かれる

(手術的固定椎の隣接椎間、生理的均衡の崩れた腰椎)

 

3.好発年齢、高位は?

50才以上年齢が高くなるほど多くなります。

 

L 4/5 > L 3/4に多い

 

4.症 状

1) 下肢の痛み(坐骨神経痛)やしびれ、間欠跛行が生じます。

間欠跛行とは・・・歩くと下肢痛やしびれが生じ休むと改善するが、再び歩くと症状が生じ、
連続して歩けない症状です。

 

 

ポイント

 

狭窄症の症状は馬尾や神経根の血流障害により生じますから痛みやしびれは脊柱管が広くなる前傾姿勢では軽減し脊柱管が狭くなる立位や伸展姿勢で増強します。

したがって座位で乗る自転車は、こいでも痛みはでません。姿勢因子があります。

 

 

2) 間欠跛行の症状は神経が圧迫される部位により異なります。

 

(1) 馬尾型

主に中心部の狭窄により馬尾が圧迫されるタイプ。
下肢の痛みはなく両下肢のしびれ、だるさ、ふらつきや頻尿、残尿感、便秘等の膀胱障害が生じます。14%

 

(2) 神経根型

主に脊柱管の外側が狭くなり、神経根が圧迫されるタイプで、下肢痛が主訴となります。 70%

(3) 混合型

馬尾型と神経根型の両方が混在したタイプです。両者を合わせた症状があります。 16%

 

 

5.どうして診断するのですか?

1) 症状から

年齢が40代後半以上で、立位や歩行で下肢痛やしびれが生じる場合疑います。

 

2) 診察所見から

● 痛みシビレが、脊柱管が狭くなる体位(立位、後方伸展)で誘発されるかどうか調べます。

● 神経学的に反射、筋力、知覚などに異常があるか?検査します。

⇒ 診察により「腰椎由来かどうか」、「痛みが脊柱管の広さ狭さに関係するか」、また「病状の程度」などが明らかになります。

 

3) レントゲン像から

脊柱管狭窄に関係する所見を観察します。

● 前方すべりや側方すべりを伴う

● 変性による側弯変形がある

● 椎間不安定性がある

● 機械的負荷のかかる環境に置かれる

4) 画像診断から

○ MRIは狭窄を正確に表します。

 

5) 造影画像検査から

○ 神経根造影

下肢痛があり、責任病巣が不明の場合、神経根を造影し痛みの原因となっている神経根を診断する場合に行います。

 

6) 神経電気機能診断から

○ 神経根活動電位 ○ 知覚神経活動電位、 ○ 筋電図 など

神経組織を電気刺激し誘発された電位で神経組織の機能診断を行います。

 

6.脊椎脊髄病学会で開発、腰部脊柱管狭窄症診断サポートツール

合計点数が 7点以上 の場合腰部脊柱管狭窄症である可能性が高い。

 

 

7.同じような症状を呈する他疾患とはどう鑑別するのですか?

 

1) 末梢動脈疾患 (PAD) との鑑別

  血管性間欠跛行のことです!

   (PAD:peripheral arterial disease)

 

PAD とは動脈硬化などで下肢動脈が狭窄、閉塞する疾患で、やはり歩くと下肢に痛みが出ます。

 

○ 間欠跛行がある場合、その原因疾患は

脊柱管狭窄75.9%、PAD13.3%、合併型10.8%と言われています。

 

○ 前傾位で下肢痛は緩和しますか(姿勢因子)?

狭窄症では下肢の痛みやしびれは前にかがむと改善します。これは脊柱管が拡がるからです。PADにはありません。

 

 

○ 立位でも下肢痛は生じますか?

狭窄症では痛みます。PADは生じません。

 

○ 痛みの出る部位に違いは(狭窄症とPAD)?

狭窄症では臀部から下肢へ、坐骨神経に沿って痛みが出ます。

PADは血管閉塞部の腓腹部に痛みが出ます。

…しかし充分吟味しないと判りにくい!

 

○ 下肢動脈の拍動について?

足背動脈と膝窩部での動脈拍動は、狭窄症では触れますが、PADでは触れないことが多い。
足背動脈で感度は70%弱、また後脛骨動脈(膝窩部)の拍動が触れないとPADの確立が高いようです。

○ 自転車でも痛みはでますか?

自転車は座るので脊柱管は拡がっていますから
狭窄症では下肢の痛みしびれはでません。

○ PADは糖尿病、狭心症、など心血管系合併症を持つ人が多い。

 

ABIankle brachial pressure indexを測定すると判ります。

 

器械を使用し”ABI:足関節、上腕血圧比”を測定します。ABIが0.9未満であればPADと診断。

 

2) 腰椎椎間板ヘルニアとはどう違うのですか?

 

○ 病態が違います。

ヘルニアは椎間板(座ぶとん)が破れて中身(綿)がとび出たものです。

これが神経を圧迫します。

痛みは脱出しようとする内圧(力)が後方線維輪や後縦靭帯を刺激したり、脱出した中身(ヘルニア)が神経根に接触して炎症を起こしたり機械的に圧迫するために生じます。
病態から痛みの違いが理解できます。

 

 

ヘルニアは若年齢です。40才以下の腰下肢痛の場合、まず狭窄症ではありません。

急性発症で激痛となるのはヘルニアです。狭窄症ならヘルニアを合併した場合です。

椎間板ヘルニアは腰痛、下肢痛を主訴としますが、一般的には間欠跛行は呈しません。

 しかし高齢者のヘルニアや椎間孔へ流れたヘルニアは間欠跛行が起こる場合があります。

ヘルニアの急性期では椎間板内圧が上がる前屈位や座位で痛みが増強しますが、狭窄症の場合、この姿勢は脊柱管が広くなるので痛みは軽減します。しかし高齢者のヘルニアは狭窄症とよく似た症状を現す場合があります。

MRIを撮ればすぐ判ります。

 

7.狭窄症保存的治療は?

 

8.狭窄症手術治療は?

 

9.腰椎椎間孔狭窄症

別シリーズで説明しています。クリックしてください。